ケムリクサ 12話 最終回 感想 ~ ビターな世界に訪れたとびっきりの明るい光

ケムリクサ 1巻[上巻] [Blu-ray]

2019年冬アニメ「ケムリクサ」がいよいよ最終回を迎えました。

ケムリクサはたつき監督があの「けものフレンズ」の直後に手がける作品ということで注目はありましたが、その熱狂を継いで最初から盛り上がるのではなく、静かなスタート。

個人的にはこのブログに3年ぶりにアニメ記事書いたくらいなんだけど「好きな人は好きだけれども…」の枕詞が付く。穏やかな立ち上がりといった印象でした。

しかし毎話挿入される回答とあらたな謎。徐々に視聴者を巻き込んで11話で「せかい」について明かされ得意の「引き」で大きな盛り上がり。

結局は最終回を楽しみに待つ人たちで溢れる状況となりました。

そして配信・放送された最終回。

 

一言、いい最終回だった。

そして、いいアニメだった。

ケムリクサ 12話 最終回 

最終回を迎える時にはたいてい続きが見たいと思いつつも、終わるのは分かっている一抹の寂しさを抱える。時に視聴の邪魔となることがある。

そんな中でもいつの間にか集中して、気づけばあっという間に終わっていました。

そして今は余韻というか、ホッとした気持ちと少し現実から離れているような、ふわふわとした気持ち。ああ、面白かったなあ。良かったなあという良い作品に触れた時だけ訪れる感覚。

当然明日も明後日も来るんだけど日常が少し遠ざかっている感じ。

ようは満足しています。

※ わかば と ワカバ で表記区別しています。もしかすると混ざってしまうかも。その他姉妹の名前間違いあったらスミマセン。

ラストバトル

水が残り少ないなか、いよいよ姉妹を苦しめる現況である赤い木に近いたところで記憶の葉、りりの記憶を観ることに成功したわかばとりん。

「このせかいのしくみについて」 知ることができたのが11話でした。

 

迫りくる赤に気づかず、わかばが呼びかけるもりんは記憶の葉に夢中。(VR付けてる人みたい)

わかばはりんを守るために一人赤い幹と対峙しするも、貫かれてしまう。

 

「え?わかば死んじゃうの?」と思ったけど、とっさにみどりでダメージ軽減していたので助かりました。元ケムリクサのスペシャリストとしての側面と長い旅を経験して練度が上がっている姿の合わせ技が嬉しい。

 

そこからは長いラストバトル。

二話時点の記事でも「RPGをプレイしているような感覚」と評したけど、まさにそのままRPGのラストバトル。

 

緊張感あるピアノ系音楽が延々と鳴り続ける。敵の理不尽な攻撃は苛烈さを増す。

再び二人のコンビで赤い幹に立ち向かう。

 

でけぇー・・・。
過去ボスの技が通常攻撃だと!
一撃で即死寸前かよ!!
ラストエリクサー(みどりちゃん)バンバンつかっちゃうしかないじゃん!!!

 

わかばはついに赤い幹にたどりつき、ケムリクサを制御して止めようとするも通じず。わかばは巨大な幹の下敷きとなってしまい、最後の力でりんを守るための壁を形成する。

 

記憶の葉で見た前世とまったく同じ光景。

 

再び記憶の葉の映像がよぎります。

りりは大人への分化を完成させたが、ワカバはすでに赤い幹に倒されていたことを知りワカバを助けることを託さずに6人好きに生きることを望んだまま消滅してしまう。

 

りつとりなから遠隔ではげましとみどりの枝を受け取り、わかばの作った壁を壊すことに成功しわかば奪還に向かうが赤い幹はつよすぎた。

訪れる絶対の危機、ついにりんは「わかば」の名前を叫ぶ。

助けに来てくれたのは・・・死んだはずの三姉妹だった。 

こっからはイベントバトル。
かつての仲間を召喚して弱体化
イベントアイテム(みどりちゃんの枝)を使ってブーストして勝つ!!

みたいな流れ。ジョイパッド握ってるかと錯覚です。

ヒーラーのわかばとアタッカーりんのコンビやら、多彩な敵の形態やら、この世に留まることを捨ててでも最後の力を使って敵を攻撃した三姉妹は熱かった。

アクションシーンは少しぎこちなくとも(なんか言われてるがこの作品では本筋ではないからいいかとも思うのだけど)これまでに見れなかった技や動きがたくさんあってよかったです。

りつ、りん、りなにくわてりく、りょく、りょうの攻撃はそれぞれ個性があってよかった。

エンディング みんなが好きを手に入れた

エンディングは最高でした。

「まあ、全員好きを手に入れたしお姉ちゃん上々だわ」

この言葉通り最後には素直になったりん。

 

壁が壊れた船内に差し込む光。

広がるのは水と緑に溢れる広大な世界。安心してみんな好きを大事にできる世界。

明るい世界の入り口でりんはわかばに「好きだ」と伝えるのでした。

 ⇒⇒⇒ ケムリクサ 感想と謎や考察ネタの整理 - 2話時点

物語におけるひとまずのゴールは水の心配がない地域にたどり着くことやアカギリ・アカムシの完全な討伐とともに、りん自身で何が「好き」であるか気づき表現することにあるでしょう。

視聴者としては最初から分かってたんですけどね。

ある意味予定通りのエンディング。王道の落とし所なのにここまで楽しめる作品になるとはほんと驚きです。 

最終回と作品についての雑感

ここからは現時点での雑感を書いていきます。

ハッピーエンドなのか?

11話での衝撃からケムリクサ最終回はしっかりと物語を締めて来ました。

三姉妹とわかばのパーティは常に命の危険と隣あわせの窮地を脱して光輝く世界へ進むことができた。ハッピーエンドでしょうか?

 

消えた人たちがいるため素直には頷けません。

1話時点からのメンバー視点ではハッピーエンドでしょうけど、登場人物全員に広げると完全に救済されたわけではなかった。

最初の人であるりりも生き返って過ごすなんてことはなく、わかばもワカバであったことやりりを思い出すことはない。りくりょくりょうの裏三姉妹は満足しつつもりんたち姉妹と分かれることに。全員で新しい世界、船の外へ出ることは無かった。

 

キャラクターはみんな魅力溢れるし、愛着がある。11話から出てきたばかりのりりだってそう。だから全員で・・・

全員

たつき監督が放送終了後にTweetした全員集合の絵。

みどりちゃんやシロまで居るのはたつき監督らしい。泣きそう。

 

たとえ作品の評価が「ご都合」で固まろうともみんな一緒に船外へ出る話だって良かったです。みんな幸せになって欲しい。それでええやん、ええやん・・・

赤い木とりりの苦さ

そのようにはせず作品として回答を示したのは良かった。

 

りりは無念の人でした。

自らが生み出した赤い木によって大切なワカバが死んでしまう。

りりはワカバを助ける目的も失い、好きに生きることを分化した姉妹に託す。

死後も姉妹を苦しめる結果になっていた。ここが重く、にがい。

(りりから見た姉妹の表現が難しい。子供でもない。分身が適切なのかな?)

 

赤い木はただ暴れているわけではないのです。姉妹からすると自分たちを排除しようとする純粋悪100%なんですが、ワカバを助けたいと願った結果の存在。赤い木はその願いを遂行していただけ・・・。

それを止めたのはワカバが死の間際に発芽させたミドリちゃん。こちらもワカバがりりを守るために生み出したもの。

わかばでは赤い木を操作することが出来ず、りんのアタックだけでは倒せない。

最後に必要だったのは「ワカバ側の赤い木」とも言える「ミドリちゃんの枝」でした。りりの想いを受け止めて抑え込んだのは結局はワカバの想いだった。前世代のことは前世代で片付ける。

この赤い木とミドリの関係が苦いけどすごくいい!(語彙不足)

ケムリクサの不思議な力は現実よりも今生の別れ感を薄めてしまう。これ以上は数々の悲壮なピンチから説得力奪ってしまいます。少しビターな回答を示したの良かったです。

りりを受け入れている私たち

11話からですよ?

普通残り1~2話で物語の根幹にかかわる過去キャラが出ても「なんなの?このぽっと出キャラ」ってなるじゃないですか?理屈は分かるかも知れないけど興ざめするでしょ?

でも私も含めみんなりりのことを受け入れてる。ほとんど1話限りの登場だとしてもビターばかりではなく「りりにも幸せを!」と願わずにはいられない。これって驚きです。

理由の一つは「りりの性質は姉妹に受け継がれている」ということをコツコツ積み上げていたからでしょう。長い旅の中で描かれてきた姉妹の愛らしい口調や癖。

11話で見せたりりの会話と行動の端々は姉妹の姿に重なるものがありました。過去キャラにありがちな才ある天上人ではなく、りりもまた長い旅を一緒に続けてきたかのように感じられました。

 

もうひとつは優しさです。

とくに消滅間際です。ワカバが死んだことを悟り絶望のまま消えてくかと思いきや、これから分化する姉妹のために「ワカバを助けること」というメッセージを消す。姉妹にはとらわれずに生きて欲しいと新たに願い消えていく。

自分なら「ワカバを生き返らせろ」とか書いて怨霊と化すかも知れない・・・。

ギリギリで他の人に向ける優しさ。普通できません。大迫半端ないの人風にりりを称賛したい。

もっとも「相手を思いやる優しさ」はりりだけではなく姉妹やシロにまで言える。「けものフレンズ」のキャラにも言えるのでたつき監督の作家性かもしませんね。

次世代で叶ったりりとワカバの願い

りりの願いは2つありました。

  1. 赤い木からワカバを助けること
    りんや姉妹が赤い木に捕まったわかばを助けた
  2. 分化した姉妹は好きに(生きること)
    姉妹全員が好きを手に入れることが出来た

残念ながらワカバを助けることはできませんでしたが、次の世代で叶えることが出来ました。

ワカバもまたリリを助けるために危機の最中に策を仕込んでました。ミドリを育てて自分も復活する。こちらも時間がかかったものの「ミドリちゃんが姉妹の助けとなり、わかばとして姉妹に合流する」という形で叶えることになりました。

 

二人は消滅してしまいましたが、次世代へバトンタッチという形で願いは成就したのかなと思います。

完全なみんなハッピーエンドではないけれどカカオ60%くらいのスウィートビターハッピーエンドにはなったでしょう。

ケムリクサのテーマ

ケムリクサは「姉妹とわかばの物語」であり実は「りりとワカバの物語」でした。「姉妹とわかばの物語」のあんこを「りりとワカバの物語」で包んでいる構造。さっきチョコで例えた気がするがさておき、合わせて一つのお菓子となり美味しい。

さて、ケムリクサのテーマはずっと作中でも言われているように「好きを大事にすること」で間違いないでしょう。

たとえ周囲が絶望的な状況でも「好き」にやることを忘れない方が良い。

わかりやすく力強いテーマです。

 

同時に自己を犠牲にして行動を優先しても良い結果が得られるとは限らないというメッセージも込められているように思います。わかば・りん、ワカバ・りりの自己犠牲が切り開いた部分もあるんですが、それだけでは叶わない場合がある。

 

「姉妹とわかばの物語」は姉妹はそれぞれ好きなものを追求、わかばはケムリクサを大事にしたからこそいざという時に役にたったという場面が見られました。りんも最終的にわかばを好きという気持ちに気づき長い戦いを乗り越える力に変えました。

一方「リリとワカバの物語」では自分を犠牲にした結果が直接は相手を助けることは無かった。無駄だったとは言わないまでも、遠回りになってしまったことが秘められているのかなと思いました。

そもそもりりの赤い木の発端は仕事に集中しすぎて体調を省みないワカバを助けるためのものだったんですよね。本当はケムリクサについて研究したいワカバも好きより仕事を優先してしまった。りりのお父さんやお母さんも無理して…

 

現代のブラック労働環境に通じる話として身につまされる話でもあるんですが、やはり人間好きなことを優先してやろうという強いテーマでした。

まあ完全に蛇足であり邪推ですけど、けものフレンズの例の騒動のあとも変わらずアニメを作り続けるたつき監督の決意表明をおすそわけしてくれたのかも知れませんね。

ラストシーンの明るさ

ケムリクサはキャラが魅力的で、背景美術もしっかりしてるんですが、どうにも絵面が暗いのが気になるところ。せっかくなのに薄暗い夜のようなシーンばかりで勿体無いと思ってたんです。

前日譚では夕焼けの空程度の明るさ
話が進むにつれて暗くなって行った。アカギリとは別の霧が立ち込めているのか?ずっとダークな絵面が続くのか? 出来れば明るい背景のシーンも見たい希望

こちらも二話時点の記事で触れたのですが、結局最終回までほぼ荒廃した色合いのシーンや曇りのような回想が続きました。明るいところではしゃぐみんなが見たいと切望してたんです。

 

で、ラストです。最後の最後までひっぱってパァーっと明るくなった場面は本当に良かった。このために引っ張って来たのかも知れません。初めて触れる外界の明るさとりん告白と最高の笑顔。内容もそうなんですが、明るさの開放感がラストの素晴らしさを引き立たせていると思います。

ケムリクサの魅力は詰められた情報量の多さ

最終回で出てきたのは船。わかば船長と認識していたシロたちの8話の船でもなく、11話の浮遊するバケットホイールエクスカベーターでもなく実は舞台そのものでした。二回もひっかりました。

戦闘シーンではずーっとわかばの腰に巻いていたロープがダメージを軽減することになりました。

りょくが「まえに倒したところを見ていた」のセリフは、4話のヌシ戦でリンの目の色が左右違った理由に繋がります。

姉妹それぞれの語尾は萌キャラ付けのためのではなく、意図的に分けてた理由がありました。(スミマセン。少し古臭い手法だなと思ってました)

毎回少しずつ変化するエンディングだって見逃せない。今回はうっすらとりりとワカバが映っています。

 

こういうのが色々出てくるんです。

過去なにげなく描かれてり、違和感あるけど流してたところがきっちり後に繋がってくる。自分で気づけば嬉しいけど、SNSなどでの考察を見ても驚くことが出来る。ただ詰め込んであるのではなくて納得できる理由があるんですよね。

みんな分かっててこの作品は色々込められてるんだろう?って結構厳しい目で見てると思うのですが、それに耐えられる力があるのはほんと凄い。

そしてまだまだ謎があります。説明が必要なところはしっかり出来てると思うのですが、地球と船の関係なども新たに投下されました。また消えてしまった裏三姉妹は新たな場所に移動したようです。

本筋のストーリーは王道で綺麗に収まりましたが、まだまだ考察出来る余地や二次創作につながる余白がある。

ほんとうにありがたいですね。

12.1話に期待

また日清のどん兵衛コラボのときも思ったのですが、描かれていないけど旅の中の日常風景もたくさんある。姉妹やわかばが絆を深めていくシーン、りく・りょく・りょうの裏三姉妹を絡めた話などもっと見たい。

終わったばっかりで申し訳ないのですが、12.1話、期待せずにはいられません。

 

追記:たつき監督さすが!やっぱりやってくれましたよ。ケムリクサ12.1話の公開がありました。

⇒⇒⇒ケムリクサ 12.1話 の感想 ~ 新たに投下される謎と次作の予感

 


 

ひとまずはまたじっくり「趣味のアニメ」から見返してみようかと思います。

1話以降はアマプラでいつでも見れます。最終回お漏らし事件などもあったようですが、アマプラの放送より15分速い配信は良かったですね。アマプラ入ってない方も1話は永久無料配信だそうです。

ケムリクサ 1巻[上巻] [Blu-ray]

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TVアニメ「ケムリクサ」エンディングテーマ『INDETERMINATE UNIVERSE』

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